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No4   オーストラリアの風土のなかに立つ
グレン・マーカットの家

設計 Glenn Murcutt

 念願のオーストラリアに行って来ました。長年のあこがれのマーカットにも会いました。12年間、ひたすらかれの作品を見てみたかったのですから興奮するのもゆるしていただけるでしょうか。去年の10月のことです。

オーストラリアの建築は世界的に見れば評価は高いのですが-----北欧での評価は特に高い、でも-------なぜか日本でだけは知られていません。マレーシアの友人の建築家--------オーストラリアの大学の建築科を卒業している友人に言わせると“マーカットは国宝”というほどの人物です。英語というバリアーがあるせいで日本では知られていないとは思いたくないのですが。

マーカットさんへの設計依頼者は文句なく仕事をしてもらうのに2年は待たねばいけないそうです。噂によると設計料も高いとか。しかし、宝石のような住宅をつくっています。

なかなか難しい人で会うのは無理だといわれていましたが幸いにも現場でお目にかかれました。カリスマ性のある見事な人物でした。所員は一切置かずすべて自分でやる、だから時間がないといっていました。

工業製品を多用していますが、ディテールは精巧です。コンセプトにも面白い物があります。

批判する人は「オーストラリア人がもつブッシュのなかの家----そのロマンティシズムに訴えている、しかし、問題は都市の家だ」という風にいっています。確かにその作品はあらゆる人のロマンティックな感情を刺激することは確かです。ただしそれは生活スタイルにまで及んでいる物と思っていただいていいでしょう。もちろん、かれは都市にも住宅を建てています。

写真1 
国立公園のそばに建つ家です。これは母屋の手前にある車庫。鉄骨はボルト締めです。母屋との間に池があり、ブリッジがアプローチになっています。プールには完璧な水平が出ていました。
写真2
母屋です。深い庇が出ています。母屋の鉄骨はすべて溶接です。住居だからという説明でした。
写真3
スペースはとにかく広くてその点は日本人には参考にならないという意見もあるかもしれませんね。手前に玄関があってゲストルームもその横にあります。もちろん、ゲスト用のシャワールームも完璧につくられています。
写真4
庭側の扉をすべて開け放ったところです。一挙に戸外に曝された気分になります。床はコンクリート鏝仕上げです。
写真6
右手が玄関、左手にゲストルーム。多層構造になったガラスには透明感があります。
写真5
マーカット自身の設計になる暖炉です。機能的ですぐれ物です。
写真7
母屋を斜め裏側から見たところです。基本的にこうした場所---サバーブでは、水の供給があっても天水桶が有り、オーストラリア的を感じさせてくれます。オーストラリアの乾燥期には山火事も多いそうです。屋根には撒水機が用意されており、現実に役に立ったそうです。

 オーストラリアで驚いたことのひとつが、資料館の充実です。マーカットの設計図面はすべてミュージアムに寄付されており保存されています。しかも、キューレーターが驚くほど積極的にその利用を助けてくれます。感心しました。

(なお、オーストラリアの取材の全貌はTOTO通信1月特集号に出ています。全部で8件、8人の建築家の仕事です。見てください。)

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