今月の住宅

No. 17 不思議な空間に満ちた 15坪の土地の家

設計 山下保博 施工 松岡茂樹

適正利潤の考え方が
新しいローコスト化の
システムを生んだ

建築の新しいアプローチ

 住宅のローコスト化は、富の配分というところから考えても、社会的に重要な課題だと思います。バウハウス以来、どれほどの建築家がそれを口にしながら挫折していったかは、ご存じの通りです。そうした中で適正な利潤というテーマをかかげてローコスト化を図る人たちが生まれています。すでに雑誌などでご存じと思いますが、かれは工務店を運営する松岡茂樹さんと組んで、見えない利益を出すことを止めました。適正利潤。人工代を定め、材料への利潤の上乗せを止め、オープンな価格体系をつくろうとしています。その代わり仕事数はこなさなければなりませんが、共感する人は多くて、仕事数も順調に伸びています。

 それとともに単に安いだけでなくて、建築的にも新鮮な空間造りに成功しているところ、この点が忘れられていないところが評価できます。

←写真1

細い路地に立つこの家は、路地にたいしては大きな漆喰の壁を立ち上げています。左官は名人と言われる人だそうです。

写真2→

玄関はこのスリットのような位置にあります。

写真3

玄関は土間のようになっています。入ったところです。ダイニングと右手にご老人のための部屋があります。畳は3畳分。奥の板の部分にベッドを置かれることになっています。

写真4

この部屋のサイズがおわかりいただけるでしょうか。------------                 

写真5

ベッドに居ながらから路地を行き来する人の気配が楽しめるようになっています。

写真6

2階へ上がったところ。階段の見返し。左の壁は扉で、オープンな部屋になります。

写真7

扉を開けて階段方向を見返したところ。手前は主寝室になることでしょう。

写真8

不思議な部屋です。天井はガラスで、その下に障子状の下がり扉が2枚。本来は光のコントロールでしょうが、その使い方で空間が変化していきます。理屈でかられない新鮮な空間の発明がここにはあります。

写真9 写真10
2階の部屋の見返し。そこここにあるコーナーが空間の味わいを豊かにしています。
 
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