No. 21 逆転の
       プランニング

元代々木の集合住宅 硝筺(しょうこ)

設計:駒田剛司・駒田由香

 若い人たちにとっては人気の住宅地、元代々木。代々木上原駅から数分のところにあるこの集合住宅にはかなり惹かれる。個人的にも建築的にも。
 個人的にはこの町にぼくの気に入りのバー、カイサリヨンがある。近頃こそ飲む回数は減っているけれど、このバーはおすすめ。駅の南側の通りにある。なじみのイタリアンもある。これはルデパールという。新宿よりのガード下の本屋の右隣。一見、喫茶店風だけれど料理はおもしろい。話題のキノシタにはまだ予約がとれず行っていないけれど、とにかく好きな町だ。
 一人だったら、独身だったら、という年齢でもないけれど、この町、そしてこの集合住宅に住んでみたい、という気に入りようだ。

 外壁は波板ガラス、スチール入り。内部にはいるとフロストグラスか。もしかしたら違う素材かもしれない。和紙張りとか。チェックを忘れた。いずれにしろ光の入り方が美しくて、ガラスは2重だからガラス特有のフラジールな感じがない。

↑写真(2)奥にキッチン

←写真(3)

←写真(4)

←写真(5)

 気に入ったのは戸外の光に反応する壁。戸外を弱く隔てたことで意識化される外。その真ん中にはくっきりと窓が開けられている風景は不思議感にあふれる。まるで額縁に納められた、切り取られた現実に対面している感じがそこにある。建築的な美意識とやかくとは異なった世界観がある。

↑写真(6)

 階段を上がっていくと各階に部屋への入り口がひとつ。
 室内に入って、振り返ると黒く塗られた壁。
 とにかく光の方へ身体が動く。そのうちに気づく。
 この部屋は黒の壁を中心にして空間が設定されていると。建築的なプランのおもしろさは、この階段室の設定、建物の中央に階段室をおくことで成立している。

↑写真(7)部屋の入口

 暮らしのためのセクションは各々の住み手の考え方でどこにでも設定できる。仕切る壁はないけれど、視線が切られ、巡り歩くことで場が現れ、消えていく。全体を見通せないが、しかし1室。コロンブスの玉子的プランかも知れない。

↑写真(8)

 土地面積が階段室を中央に置くだけの、適当な広さであり、かつ、1フロアーを2室に割ることを許さない面積であったこともあるかもしれない。しかし、このプランは発明と言ってもいいんじゃあないでしょうか。
 壁無しでセクションの境界を意識化できるというのはいすばらしい。

↑写真(9)

敷地面積:77.56平米
建築面積:61.97平米
延床面積:294.71平米
構造:RC独立耐震壁構造
階数:地上4階/地下1階