No. 22 G and G House
     伸びやかな空間と
        プランニングの見事さ。

設計:塚田眞樹子

 土地の広さは100平方メートルぐらいだろうか。坪にして30坪強。全面左右一杯に建てられている。正面から見ると2つのかたまりに分けられ、強い存在感。
 黒く塗られた部分が居住スペース。白い部分が外へとつながる部分と考えられていいのだろう。
 白の部分、1階にはガレージ。玄関は白の階段を上がって、白いガラスの壁。ガラスは和紙らしきもので裏打ちされている。塚田さんの発明。フロストかオペックグラスかと思わせる感じ。夜は外へ光が漏れるに違いない。光は住居棟の屋根の下に開けられたスリットからも漏れてきて、内部の暮らしを感じさせるだろう。とはいえ基本はクローズドに造られている。
 塚田さん設計の家はこれで拝見するのは4軒目だけれど、案外に閉鎖的かもしれない。内部にいると閉鎖感はほとんど感じさせないのは、そこここに開けられている開口部が充分に外を感じさせるからだろう。でも、外からは内部の暮らしが見えないケースが多い。そうした一連の作品の中でも、この家が一番閉鎖っぽいかも知れない。階段が上がるときには、すでに結界を踏み越える意識も生まれる。これからの都市型住宅はこうした閉鎖性は順当といえるのでしょう。


↑写真(2)

↑写真(3)

←写真(4)玄関:右側の白い扉が外部へ続く。左側にはテラスがある。

内部へ入ると仕掛けがある。正面に白く広いテラス状の庭。空へ抜けている。その向こうに透明ガラスで包まれたバスルーム。玄関を振り返えると白いガラスの壁。外の光りを感じる。玄関は外に挟まれているといったらいいだろうか。この玄関、夜は行灯。
 閉鎖的と書いているけれど、住宅の密集地、視線はコントロールせざるをえない。

←写真(5)

←写真(6)階段室から玄関を見上げる

 玄関から上下へ階段。上がるとリビング、ダイニング、キッチン。長方形で長手方向で13メートル弱。視線の延びもここまであるとうれしい。距離というのは何ものにも代え難い空間の開放感を与えてくれる。斜めに走る天井の下にスリット。ここからも空が見える。丁度、引っ越しされたばかりで物がいろいろ積まれているけれど開放感は十分。
 写真(7)は見返し。カメラの左下へ階段。玄関からリビングを抜けて下へ。玄関への回遊性の通路は何通りかある。

←写真(7)リビング、左奥にキッチン、その右側にも下階につながる階段がある。

←写真(8)写真(7)の見返し

 白いテラスのなかにバスルームが浮いている。周辺をガラスで囲い、バスタブに入るとテラスの床が同一平面として伸びていく。野天風呂感覚か。

←写真(9)右側のガラスの箱が浴室

←写真(10)浴室の中からテラス、その奥に玄関が見える

 玄関が2階にあるのでこの部屋は1階。さらに下にもう1層半地下がある。1階には茶室、半プライベート。リビングとの変化、畳みの部屋の儀式空間、さらに下にプライベート空間。過不足のない見事な住まいだ。

←写真(11)待合

←写真(12)茶室

←写真(13)トイレ

 リビングからいったん外、テラスへ出ると、さらに下へ。ガレージへのまわり階段が見える。

←写真(14)

←写真(15)

 まわり階段はガレージへ抜ける道。回遊性の通路は一本だけでなく2本用意されている。このこだわりが閉所恐怖症のぼくとしては大いにうれしい。コンセプト明快。

 住んでみたいですね。この家は。

←写真(16)

場所   東京 等々力
家族構成 3人
構造   木造
土地   100平方メートル強程度
延べ床  40坪くらい