No. 25 殻の家

設計:田辺芳生(プライム)

 まず、勝手ながら申し上げます。「こころざしの高い家」です。
 ある意味で70年代を思わせる建築だと思います。たんに住宅を設計すると言うことではなくて、建築を意志しているといってもいいかもしれません。言い方をかえるとプロトタイプへの志向もあると感じます。「殻」というネーミングにも設計者の思いが感じられます。
 70年代と違うとすれば、閉じられかのごとく装っていますけれど、開かれた家でもあると言うところでしょうか。拍手です。

 南東の角地。壁と外壁を一体にすることで内部空間の視線の距離を伸ばしています。内部空間は平面図で見るよりはるかにのびのびとしています。

 コンクリートの造形でクローズドな形に見えますが、外から中への視線を誘うようなところがあります。とはいえ人通りの少ない道ですし、通人は限定されている土地ですから、すぐに収まるでしょう。


 暮らしを見せる、感じさせることは住宅にとって大切だと思います。町への接触を示すことは建築家のみならず施主の心をも感じさせます。(わたしの家は同じ東南の角、コンクリートで、建築家の内部を見えるようにしようと言う意図に反して、クローズドな家にしてしまったら、近所の子どもたちは「爆弾を造っている家」と呼んでいたそうです。反省しました。)

 車も止められるようになっていて境界から家が引いているのにも好感がもてます。

←写真(1)

 さまざまに視線が伸びるような仕掛けがあります。これは外部から見ていますが、もちろん内部からも見えると言うことでもあります。

←写真(2)

 玄関ですが写真は内部の部屋からガラス越しに撮っています。客は階段を上がって、右手ドアを開けて入ります。内部への距離をとろうという事でしょうね。

←写真(3)

 中央に玄関から入ってきた人が見えます。黒く塗られた部分は玄関とトイレ。それ以外の場所が空間をのびのびと感じるようにスペースを作りだしています。

←写真(4)

 1階はキッチン、ダイニング。リビングでもある場でしょう。ぼくとしてはかなり低いテーブルと椅子で、リビング主体の高さにしたいところです。階段室が明かりとりでもあり、空間を拡大させる場にもなっています。

←写真(5)

←写真(6)

←写真(7)

 トイレ。半分オープン。来客の時はブラインドを降ろすそうです。少しでも広く感じさせたいという設計の思いやりです。

←写真(8)キッチン

 ガラスの向こうにテラス、ボイド。実質よりはるかに広さを感じます。外部への内部からの視線のコントロールもいい具合です。

←写真(09)2階

←写真(10)2階

←写真(11)2階

←写真(12)2階

 地下、東南の角からの見上げです。空へ抜けるこの空間が、基本的にこの家の距離感を生み出しています。左にエントランスが見えます。右、1階のテラス。

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←写真(14)地下室

 L字型にボイド。向こうに見えるアート風な色彩は向かいの家の壁。

←写真(15)

 地下室の見返し。

←写真(16)

 

←写真(17)

 黒いコアのなかのシンプルなバスルーム。

←写真(16)